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20-21シーズン CL決勝 感想①

切ないと思うのは何かと言うと、至極当然のことだがシティズンズにとってアグエロは出場しようがしなかろうがこの試合の主役であり、そしてそれはシティズンの中だけでの話であるということだ。

当たり前のことで、現実は残酷である。アグエロの退団にビッグイヤーをとか、アグエロが劇的に決めるドラマなどは我々の願いでしかなく、チェルシーは実力をもってそれをはねのけた。それが切なく口惜しい。

 

 

調べてみて分かったのだが、CL決勝初出場のチームは7連敗していたとのことだ。つまり今回で8連敗になる。経験というのは大事ですね。チェルシーが最後にCL決勝に進出したのは11-12シーズン、この頃の主要メンバーで今も残っている選手はいない。(チェルシーの過去成績とか、調べたくて、検索したらgoogle青い花火が上がってたまらなくムカついた。)単純な選手の条件としてはどちらも一緒なわけだが、それでもクラブとして決勝を戦った経験がある差だろうか、序盤は明らかに浮足立つシティに対しチェルシーは冷静にカウンターをさしていた。

 

 

敗戦したのだから当然悪かった点に対し不満が湧く。なぜ今季どん底スターリングを先発出場させたのか。なぜギュンドアンがアンカーなのか。なぜディマリアをも完封したジンチェンコがついていけない、ストーンズ何だそのクリアは、スターリング何だ君は、フォーデンそこは行けるわけな…おお、そこ行けるんか、すごいなお前。

ペップの采配にケチをつけるのは簡単だが、観ているこちらもわずかながらも意図は理解したい。ブログ界隈には戦術について細かく分析し、なぜこの選手を起用したのか、なぜこのフォーメーションなのか、と言ったことを細かに説得力を持って書いている方々がいるが、私はズブの素人なのでそのようなことはできない。大雑把に雑に考えてみる。

 

① なぜスターリングが先発なのか

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一昨年の全能感はどこへやら。哀しい。

(調子いい時の)スターリングを左に配置するメリットは、スピードを生かした縦突破、カットインから割と精度の高いシュート、戻して裏抜けを永遠に繰り返すことで対面を後手回らせ続けサイドの優位性を取れる点にある。例えば相手がTAAのような攻撃全振りマンに対してなら非常に有効だろう。ジョーが対応しなければいけない可能性が生じるだけで優位を取れている。

では今回はどうか。結果論と言えばそうだが、今回のスターリング先発作戦には重大な2つの欠陥がある。スターリング自体が不調+Rジェームズが対人に強いということである。好不調なんてのは蓋を開けてみればなんてのもあるが、今のラズに関しては使えば使うほどダメになっているし、そもそもCL決勝でラズが好調でないと勝てないディールをするべきではない。しかも不調のスターリング、何にしたって点が取れない。キーパーとの一対一で決めれない。カットインからのシュートなど望むべくもない。だからスターリングの選択肢は普段より一つ少ない状態であったも同然だ。加えてRジェームズの存在がスターリングを完全に試合から消した。スターリングの速さに対して明確に対応できるジェームズは縦突破も裏抜けも普通に対応していた。デブライネくらいえぐいスルーパスを通せば裏抜けにはチャンスがあり得たが、途中で怪我離脱した彼のことを考えてもどうしようもない。

ちなみに逆サイドについては、スピードが無い分カットインとカットインを囮にした縦の二択が主になるマフレズは多分5バックには無理で、リュディガーが縦をケアしている分チルウェルは余裕を持って臨めており、マフレズもまたほぼ前を向けず試合から放り出されていた。

スターリングの起用。多分、奇策というほどではない。ただ思うことは、フォーデンもまた対面に対して明確に優位を取れる選手であり、どちらが今良いかは言うまでもないということ。フォーデンで見たかった。結果の話にはなるが。

 

② ギュンドアンアンカー

Golo Kante of Chelsea and Ilkay Gundogan of Manchester City battle for possession during the UEFA Champions League Final between Manchester City and...

これは奇策。さっぱり分からない。去年にはギュンアンカーは無理ってわかってたでしょ私も貴方も。

ギュンドアンは浮き球のパスが結構上手く、一応18-19では5バックに対して浮き球で崩すシーンは見せていた。それはそう。

問題点としては守備がきつくなりすぎる。ジーニョのように広い範囲をカバーできるわけではなく、ロドリのように危機管理ができるわけでもない。チェルシー、もといプレミアのカウンターにそれではもうきつすぎるというのは分かっていた。はず。しかも中盤のその位置はカンテがいるのでそもそも浮き球を提供できなそう。リスクばかりが伴う。

百歩譲ってスターリング先発だけならよかったが、アンカーは絶対的にフェルナンジーニョであった。ロドリでもダメではないが、速いカウンターを持つチェルシーにロドリではまだきつい。

 

③ジンチェンコどうしたの

Oleksandr Zinchenko of Manchester City lies on the pitch dejected following defeat in the UEFA Champions League Final between Manchester City and...

本職攻撃的MFながら準決勝ではディマリアを完封していたジンチェンコ、決勝ではかなり難しい感じになっていた。よくわかんないけど、多分スターリングのせい。理由はPSG戦ではフォーデンがそこにいたから。というかジンチェンコの攻守が良い日はいつも左はフォーデンかジェズスだから。

 

④ ストーンズ何だそのクリアは

John Stones of Manchester City chases down the ball under pressure from Timo Werner of Chelsea during the UEFA Champions League Final between...

数えては無いけど多分3回くらいあったストーンズの雑なクリア。小心なのか集中力の欠如かは分からん。多分決勝で浮足立っていた一人だと思う。というか最初から落ち着いて見えたのはデブライネとエデルソンくらい。ルベンですら若干慌ただしかった。

 

⑤ スターリング何だ君は

Reece James of Chelsea looks to clear the ball whilst under pressure from Raheem Sterling of Manchester City during the UEFA Champions League Final...

Raheem Sterling of Manchester City is challenged by Reece James of Chelsea during the UEFA Champions League Final between Manchester City and Chelsea...

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チンチンにされるって多分こういうこと。

 

⑥ フォーデンそこ行けるわけないことなかった

Andreas Christensen of Chelsea defends from Phil Foden of Manchester City during the UEFA Champions League Final between Manchester City and Chelsea...

特に不満はありません。最初は正直微妙だったけど、KDB離脱と謎と言って差し支えない采配の中で一人気を吐いていた。敗戦も残されたポジティブ要素の一つ。

 

⑦ ベルナルドの使い方が雑すぎるんだよォ!

Ngolo Kante of Chelsea is challenged by Bernardo Silva of Manchester City during the UEFA Champions League Final between Manchester City and Chelsea...

これも主要な敗因の一つ。上手く使えばボール運搬とリスクマネジメントとスペース管理を一手に引き受けられるミスターマルチタスク、ベルナルド御大をいくらなんでも適当に使いすぎた。ギュンドアンをアンカー起用することで生じるリスクをベルナルドでカバーしたかったのかもしれないが、あり得んスペースを管理できるカンテがいる中で後方にカバーしに行ったところでそれは誰が運ぶのかみたいな。フォーデンはそういうタイプに見えないし。思い返せばシティのアンカーは狙われ所で、リバプールのゲーゲンプレスは足元自体はそこまで上手くないジーニョを苦しめ、チェルシーのパスコース切りはコースが無いと一旦思考がログアウトするロドリからボールを奪い(この試合は普通に勝った。ランパードの頃。)、そして今度は「アンカーを狙ってくるであろうところをカバーすることが墓穴」といった風情。ペップが悪い。

 

⑧ 策溺

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割かし何度も見たシーン。

彼がこのポーズをとるときは決まってこれまでやってこなかったことをやって事故ってるとき。リージョは止めてあげてください。

聞けるわけないから意味のないことなんだが、ペップに一度聞いてみたいことは「何で大事な時にこれまで積み重ねてきたことを信じてあげられないのか。」ということである。大一番で奇策。ペップの奇策、というか奇策には2種類あると思ってて、それは「自分たちのペースを握るための奇策」と「相手の良さを消すための奇策」である。後者を選択しようが最終的には自分たちがペースを握っているんだが、要はスタートの考え方だ。前者が成功した時は相手を揺さぶるもので、後者は相手に自分たちが揺さぶられない。

リヨン戦での(多分向こうのカウンターを警戒した)唐突な3バックに分かるようにペップは後者がとにかく苦手である。そもそもボールを保持してリスク回避しながら先手先手で動かなければペップのやり方では勝つのが難しいのに、後者は明らかに受動的な考えなのだ。これはモウリーニョさんが得意とすることで、ペップが取るべき奇策はカンセロロールみたいな奴だ。その深いサッカーへの理解を持って相手を混乱させ、その思考を破綻させるべき奇策だ。相手にやりにくいと思わせようとしたら負けである。

 

まず攻めなければペップは勝てない。勝てていない。そういう意味ではギュンドアンのアンカー起用は攻めていた。戦前の考えでは攻めた奇策であったのかもしれない。5バックに対して過去に浮き球で崩していたギュンドアンは確かに有効かもしれなかった。でもそもそものことを考えて、その頃と今季とでポジションが違っていて、どっちがギュンが輝いていたかは明確であって、それを考えたらギュンをアンカーというのは訳が分からない。

 

 

そんなこんなでアグエロビッグイヤーを掲げさせる夢は叶わず。コンパニの時より、シルバの時より、遥かにそこに近かっただけに残念でならない。レジェンドは去るが、次。次がある。今度こそ優勝を。

Sergio Aguero of Manchester City looks on during the UEFA Champions League Final between Manchester City and Chelsea FC at Estadio do Dragao on May...